絵本は、さまざまな喜怒哀楽の感情を物語りにのせて、子どもたちの心に届けます。また「あの頃」を懐かしむシニア世代をはじめ、多くの世代をも惹きつけます。無数にある絵本の中から、子どもに望ましい作品を選び、熟読し、音読練習を反復することは、シニア世代の高度な知的活動です。そして、地域の大人と子どもが街でつながっていた「あの頃」と絵本を架け橋にして、復元しよう、という試みが、シニアボランティアによる「絵本の読み聞かせプロジェクト」、”りぷりんと”です。
毎週1冊の絵本を読み聞かせる、そして耳を傾ける、というコミュニケーションを通して、心の栄養をお互いが分け合い、子どももシニア世代も、そしてそれを見守る世代も元気になる-それが ”りぷりんと”の願いです。
少子高齢化が進む先進国では、高齢者のためだけや子育てのためだけ、といった二者択一の公共政策だけでは世代間の対立を招きかねないと言われています。その打開策としてアメリカではすでに、1990年代初頭から保健・福祉・教育分野を中心に、地域における世代間の共生・共益、つまり'Winーwin'(一石二鳥)をねらったパイロット事業が進められてきました。
わが国では核家族化、過度なプライバシー保護・匿名化の影響で人間関係が希薄化し、コミュニティの崩壊が進んでいます。一度疎遠となってしまった世代と世代をつなぐには、自然発生的で私的・個人的な交流の促進のみでは不十分であり、熟慮された「仕掛け(プログラム)」を要するとも言われています。
東京都老人総合研究所、社会参加とヘルスプロモーション研究チーム(現在は東京都健康長寿医療センター研究所 社会参加と地域保健研究チーム)では、2004年度より、東京都や厚生労働省の厚生労働科学研究費補助金等の助成を受け、子どもたちへの絵本の読み聞かせを主な活動とした、シニア世代による学校支援ボランティアの養成に着手しました。
そして、シニアボランティアと子どもたちとの世代間交流が、相互にどのような影響を与え合い、双方にどのような効果をもたらすのかを調査する先駆的研究として
「世代間交流による高齢者の社会貢献に関する研究」
Research of
productivity by
intergenerational
sympathy
を開始しました。この研究の頭文字をとって、" REPRINTS " 「りぷりんと」と命名されました。「りぷりんと」とは文字通り「復刻版」を意味し「一度は廃刊になった名作絵本が復刻するのと同じように、シニア世代が自らの人生に再びスポットをあて、その役割を取り戻し、コミュニティの再生のために復刻を遂げてほしい」という願いも込めて命名しました。
NPO法人 りぷりんと・ネットワーク 理事長
松島 康夫 (りぷりんと・北)
世界最古の文学作品とされる「ギルガメッシュ叙事詩」や、シャンソンの世界を描いた「魔法の夜」といった作品が絵本になっていることをご存知でしょうか。大人も楽しめる絵本があることに私自身驚かされた時のことを、今でも鮮明に覚えています。
もちろん、昔話をはじめとする子ども向けの絵本も日々出版されており、読んでも読んでも尽きない状態です。絵本の読み聞かせは、子どもたちの健やかなこころの発達に役立ち、その将来に良い影響を与える事を「りぷりんと」の活動を通じ実感しています。
自身の脳の活性化の為にと「りぷりんと」の活動に参加した私ですが、百歳を超える人生の先輩からお礼を言われたり、小さな子どもからハイタッチを求められたりと、活動を通じ様々な喜びに出会いました。「りぷりんと」には、楽しみながら小さな社会貢献を実現する機会があります。今後も「りぷりんと」の輪を広げるための活動に取り組んでまいります。
NPO法人 りぷりんとネットワーク アドバイザー
藤原 佳典 (東京都健康長寿医療センター研究所)
少子超高齢社会を乗り越えるための”処方箋”は、「シニア世代ができる限り元気で暮らすこと、そして、その活力を次の世代の成長や成熟に役立てること」に尽きると言って過言ではありません。そのモデルとして、私たちは、平成16年からシニアボランティアによる絵本の読み聞かせを通じた世代間プロジェクト「りぷりんと」を推進してきました。
その研究成果としてシニア世代や子ども・青壮年世代それぞれに幸せをもたらす効果が明らかになりました。しかし、モデル研究には限界があります。4つの地域で始めた「りぷりんと」は日本全体でみると、たった4滴の幸せしかもたらすことはできません。
そこで、「りぷりんと」の幸せのシャワーをもっと多くの人に浴びて欲しい!との思いから、シニアボランティアと研究者によるNPO法人を設立しました。
みなさまのご支援、ご協力を賜りますよう、何卒お願い申し上げます。
(株)エーザイ
(株)ポプラ社
(株)絵本ナビ
(株)福音館書店
(株)ライフ出版社